スタッフブログ雪の痕跡

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 山の一部に敷地のある付属園は、飼育動物とは別に、野外に生息する野生動物が訪れます。雪の積もった冬の時期、雪かき前の朝、園内には多くの訪問者たちの足跡が残されています。雪の上を少し歩き、高いフェンスの前で両足をそろえてプツリと途絶える鳥の足跡。線の上を歩いたかのように、まっすぐつけられた足跡はキツネのようです。
 このキツネの足跡はよく見かけます。歩きやすい通路をしっかり利用して、ときおり気になったものでもあったのか、ちょっと逸れてみたり。足跡を辿って、その動物が何を見たのかなー、何が気になったのかな、と考えるのもなかなか楽しいのです。
 ある日、E飼育員がおもしろい痕跡を発見、報告してくれました。「この足跡(キツネ)の持ち主は、レンちゃんのところにだいぶとどまっていたようですよ。」・・・と。そして見せられた写真には、付属園で飼育されているキツネの「レン」の獣舎のフェンス前に、少し溶けた雪の跡が写っていたのです。「しかもレンも気にしているようです。」とのこと。なんでも、レン側からフェンス越しに手(前脚)を伸ばして、雪の溶けた部分をかいた跡があったそうな。
 「何!?」と燃え上がる嫉妬。実は私、「レン」とは相思相愛の間柄と思っていたのです。実際はちょっと仲が良いだけなのですが。いそいそと現場を見に行くと、レンの獣舎に向かう足跡、フェンスの前におそらく居とどまって溶けた雪、おそらくレンが気にして雪をかいた跡、そして去っていく足跡・・・。報告通り。そしておそらく想像通りの雪の痕跡。
 「くっ悔しい・・・!」何が悔しいのかというと、レンが前脚で「ねぇねぇ」とやったと思われる跡が、なんだか仲良さげに見えたのです。
 雪に残された痕跡を見て、キツネ同士なら、一瞬で解り合えることもあるんだろうなぁ・・・。と、少しのジェラシーと虚しさを感じたのでした。
 レンに「これは誰なの?」と聞いても、答えてくれません。

 さて、今回で私の書く文章は最後となります。思い返してみれば、過去には飼育動物、保護動物、付属園に現れた生物や、餌のことから排水溝のことまで、時に脱線しながら多くの事柄を書いてきました。
 飼育員になったばかりの頃、入口近くの獣舎に居たレンは、新人の私に対してものすごく悪そうな顔をしてうなってきました。それから段々と仲良くなって、呼びかけに反応してくれるようになったり。たまに呼んでくれたり。レン以外にも、そうやって距離の短くなった個体は多くいます。
 日々ちょっとずつ変化していく毎日。ありがとうございました。

戸谷諭美

投稿者戸谷諭美

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