スタッフブログリョウマの苦難

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 園内整備とタヌキの『リョウマ』についてお話します。事の発端は、『リョウマ』の飼育舎近くの松の木が立ち枯れしてしまったことです。立派に成長した松の木なのですが、周りの青々とした葉を揺らす他の松の木に比べてその葉は茶色く、幹にはサルノコシカケというキノコの仲間がぽつぽつと生えていました。放っておけば何かのきっかけで倒れてしまう恐れがあり、そうなれば近くの動物舎が潰されてしまう可能性がありました。これでは切るしかありません。
 幹の根元が直径80cm程の大きな松の木にはクレーン車の利用は不可欠。また、作業には大きな音の出る電動ノコギリも使います。只でさえ臆病な『リョウマ』のすぐ横で行われる作業に、パニックになってしまわないかとても心配でした。他の動物もそれぞれ獣舎の小部屋へ避難させるか計画を組む中で、元々別室のない獣舎にいる『リョウマ』にその選択肢は無く、また、保護されてきてからはケージ類への収容経験もありません。これまで必要に駆られたことが無かったのも事実ですが、臆病な個体だからと収容を避けてきた過去が仇になりました。かといってすでに老齢の身である『リョウマ』を無理に捕まえてはかなりの負担がかかる心配がありました。
 収容の馴致が出来ないかと試しにバリケンネルを獣舎に入れてみると、予想通り近づきもしません。徐々に慣らそうと餌の肉をバリケンネル内に置いてみると、手前に置いた肉はそっと咥えて食べるのですが、奥に置いた肉は諦めて食べません。かたくなにケージ内に足を踏み入れようとしないのです。飼育員との意地の張り合いのような日々が続きましたが『リョウマ』は譲る気が無い様子で、伐採予定日が迫りました。結局根を上げたのは飼育員の方でした。一向に慣れる気配の無い『リョウマ』に、迫る期限。収容は諦め、せめて獣舎内でパニックになった際の危険を減らそうと、高い場所へ登れる木の通路を一部取り外しました。伐採作業の途中で『リョウマ』に異常が見られれば無理にでもバリケンネルに入れ、他の飼育舎へ避難させるという覚悟を決めて当日を迎えました。
 作業が始まってすぐ、『リョウマ』を含めた動物達の様子を見回りました。大きな音が響く中、ハクビシンは獣舎の天井の骨組みに登って自主避難、カモシカの内一頭、『オタリ』だけは驚いて走り回っていたため、急遽収容としました。そして、肝心の『リョウマ』は。
 獣舎の低い台の上で身を縮めてじっとしていました。これは園内の他の場所を工事している時にも見られた行動で、怯えてはいるものの、パニックになっている様子はありませんでした。午前中に始まった工事は午後には終わり、一時的に収容していた動物達を元の環境に戻すと、まだ少し縮こまっていたり、元気よく餌を食べたりと反応は様々でした。最終的には良い意味で拍子抜けするくらい、皆普段通りに餌を食べてくれました。リョウマもちゃっかり完食しており、伐採は無事に終わりました。

 動物にストレスがかかりそうな時は万が一を考えて大げさな対応を取ることも珍しくありません。済んでしまえば無駄な対応だったということもありますが、不幸な事故が起きてからやらなかったことを後悔するより、笑って何てことなかったねと苦労話にしてしまう方がずっといいと思います。
 今回は撮り越し苦労で済みましたが、この先バリケンネルへの収容が必要になる事態が起こるかもしれません。その時に備えて『リョウマ』の馴致に再挑戦したいと考えている、今日この頃です。

写真の『リョウマ』は現在の姿です。夏毛への換毛が終わっていないため、あちこちから浮いた毛が見えています。顔周りの毛も抜けてしまって、冬と比べるとすっかり様変わりしています。

遠藤モナミ

投稿者遠藤モナミ

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