渡邊 敏 没後90年 令和2年度 市立大町山岳博物館 企画展博物学と登山 -大正登山ブームと信州理科教育のさきがけ-
開催期間 2020年7月18日(土) ~ 9月27日(日)
明治維新以降、政府はそれまでの読み書き中心の学習ではなく、野外学習や科学実験などの実績的な教育を取り入れた新しい学習を全国で展開させました。明治・大正期、そうした教育を修めた信州の教師たちの中に、動物・植物や岩石・鉱物などといった、このころから盛んになりはじめた植物学の分野において、北アルプスなどの高山に自然科学のフィールドを積極的に求め、学術登山を実践する人びとが現れます。当時、国内の登山黎明期にあって、そうした博物学に通じた長野県内の教師たちが自ら生徒たちを引率して、授業での遠足や学校集団登山で北アルプスなどへ登ったことは、「大正登山ブーム」といわれる大正期以降の近代登山隆盛のひとつの要因を成したと考えられます。
なかでも、福島県出身の旧二本松藩士・渡邊敏※は明治・大正期に教論や校長として大町市をはじめとする長野県内の学校に勤め、信州における近代教育の源流を形成した教育者のひとりです。とりわけ、日本登山史において特筆すべきは、国内の近代登山のさきがけのひとつとして明治10年代に白馬岳登山を行なったことと、明治30年代以降、その教育上の有用性をいち早く説いて学校集団登山を信州の山岳で実践したことです。国内の近代登山黎明期にあって、これらは注目に値します。さらに、信州理科教育の発展を担った河野齢蔵や矢澤米三郎、保科百助(五無斎)、志村寛(鳥嶺)らといった植物・動物や岩石・鉱物などの博物学に通じた長野県内の教諭の士々たちが、信州の山岳をフィールドとした学術登山や生徒を引率しての学校集団登山を率先して行いました。現在までに、長野県内の中学校などで学校集団登山が広く行われてきている背景には、明治・大正期の教育者たちの活動があったことは見過ごせません。本展を通して、こうした登山が持つ日本登山史上の意義を再度見つめ直したいと考えます。
本展では、大正登山ブームや信州理科教育のさきがけともなった明治・大正・昭和初期の北アルプスにおける博物学と登山のかかわりについて紹介し、博物学に通じた長野県内の教論の士々らが残したゆかりの品々約30点を展示します。
※渡邊 敏(わたなべ はやし・びん・さとし)...1847(弘化4)〜1930(昭和5)年
会期 | 2020年7月18日(土) 〜 9月27日(日) ※会期中、7・8月は無休。 ※9月7日(月)・14日(月)・23日(水)は月曜または祝日の翌日のため休館 |
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開館時間 | 午前9時 ~ 午後5時※ 入館は午後4時30分まで |
会場 | 市立大町山岳博物館 特別展示室 |
観覧料 | 大人450円 高校生350円 小・中学生200 円※常設展示と共通、30 名様以上の団体は各 50 円割引 ※そのほかの各種割引については窓口でお問い合わせください |
主催 | 市立大町山岳博物館 |
展示構成
- 第1章 博物学と登山
- 第2章 大正登山ブーム ―近代登山の隆盛―
- 第3章 信州理科教育のさきがけ ―博物学の士々群像―
- 第4章 山の博物誌 ―過去・現在・未来へ―
主な展示資料

- 1. 渡邊敏記恩碑の拓本(額装) 【大町市立大町西小学校蔵】
- 2. 田中阿歌麿筆仏語の書(軸装)《パネル写真》【原資料:西山保氏蔵】
- 3. 河野齢蔵使用の山高帽 【白馬村教育委員会蔵・白馬村歴史民俗資料館展示】
- 4. 矢澤米三郎著書 【当館蔵】
- 5. 保科百助蒐集 長野縣地學標本 【大町市立大町西小学校蔵】
- 6. 志村寛専用の植物標本ラベル 【当館蔵】
企画展関連の催しご案内
※下記の催しについては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況によって中止を含めて予定変更の可能性があります。随時、最新情報を当館公式ウェブサイトでご確認ください。
ミュージアムガイド
学芸員が展示の見どころなどを解説します。 ※事前申し込み不要。当日直接ご参加ください。ただし、通常の観覧料が必要です。
期間 | 7月19日(日) 8月10(月・祝) ※山の日 9月26日 |
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時間 | 各日とも1回目 午前10時30分〜 2回目午後2時30分〜※各回の所要時間は20分程度、午前・午後内容は同じ。 |
会場 | 市立大町山岳博物館 特別展示室(企画展会場) |
ワークショップ「一壜百験(いちびんひゃっけん)―山のミニ科学実験教室―」
※「さんぱく こども夏期だいがく」として実施 大町エネルギー博物館学芸員を講師に迎えた科学教室。 高い山でおこるふしぎな現象を再現して、その仕組みのなぞを解き明かします。夏休みの自由研究にも最適です。
期日 | 8月1日(土) |
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時間 | 午前9時30分~正午 |
会場 | 市立大町山岳博物館 講堂 |
協力 | 大町エネルギー博物館 |
対象・定員 | 小学生30名 (定員になり次第締め切り)※申し込み時期・方法等の詳細は、当館公式ウェブサイトでご確認いただくか、直接お問い合わせください。 |
さんぱくゼミナール
「信州の教育者・地質学者 保科百助 ―明治期を駆け抜けた唯一無二の奇才 五無斎にせまる―」
信州の教育者・地質学者の保科百助(ひゃくすけ)(号・五無斎(ごむさい))について造詣の深い講師をお招きした講演会。明治期を駆け抜けた唯一無二の奇才と称される保科百助について、その人物像やエピソード、後世に残したその功績などをお話しいただきます。
期日 | 9月20日(日) |
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時間 | 午後1時30分~午後3時 |
会場 | 市立大町山岳博物館 講堂 |
講師 | 村田長年さん(五無斎保科百助研究会) |
対象・定員 | どなたでも 先着50名※当日までに電話・FAX・Eメールまたは直接、山岳博物館へ。 お申し込みの際は、参加希望者の氏名、住所、電話番号をご連絡ください。 電話:0261-22-0211/FAX:0261-21-2133 Eメール:sanpaku@city.omachi.nagano.jp ※定員になり次第締め切ります |