特別展 第一部日本山岳画協会展「日本の山・世界の山」

開催期間 2014 7.19(土)〜9.15(月)

主催者あいさつ

日本山岳画協会展

日本山岳画協会は、1936(昭和11)年に日本山岳会を母体として、好んで山の絵を描く画家の集団として結成されました。創立会員には中村清太郎、足立源一郎、石井鶴三、茨木猪之吉、吉田博ほか12名が参加して発足し、本年で78年目を迎えます。 作品の主題は、山頂や山中などに限定せず、望遠、山麓、溪谷、湖沼、草木、禽獣など山に属するものはもとより天象、人生、神話、伝説の類まで、国内外に広く題材を求めたものであります。 協会結成15年後の1951(昭和26)年、大町の地に山岳博物館が誕生し、山岳文化の殿堂として今日に至っています。 本年は大町市制施行60周年、大町市と美麻村・八坂村との合併10年、中部山岳国立公園指定80周年という三重の記念すべき年にあたり、ここ大町山岳博物館を会場に約80日間の長期にわたって展覧会を開催いたします。 ご来館の皆様には山の魅力の再発見や絵画から伝わる山岳美を感じ取っていただき、作品に込めた作者の熱意と心情をお汲み取りいただければ幸いです。

市立大町山岳博物館
日本山岳画協会

日本山岳画協会の歴史

日本山岳画協会は1936年(昭和11)に日本山岳会に所属する好んで山を描く画家12名によって結成された団体で、創立以来本年で78年目を迎えます。 当協会の作品の主題は、山頂・山中とか狭く限定せず、遠望も山麓もそして渓谷、湖沼草木、禽獣の山に属するものは固より、天象、人生、神話、伝説の類まで、国内外に広く題材を求めたものであります。 創立会員には、中村清太郎、足立源一郎、石井鶴三、石川滋彦、丸山晩霞、吉田博などが名を連ねて居ります。記録によれば結成から9年目の1944年(昭和19)まで、毎年東京と大阪で定期的に展覧会を開催していますが、途中1941年(昭和16)に戦争に突入、それに続く1945年(昭和20)の敗戦と占領下の社会情勢の混乱の中で、当会も活動できない数年を過ごし、1949年(昭和24)になって、創立会員の中の5名(上記の中、丸山を除く)と戦前に入会していた4名と新規加入の6名を加え計15名にて再発足しました。 爾来会場は主に東京で、時に神戸での開催が記録されていますが、1976年(昭和51)以降は東京のみの展覧会開催を続けており、会員数も20名内外で推移しています。そうした中1984年(昭和59)に初めて大町山岳博物館で特別展が開かれ、現在まで略々5年每に開催しています。
創立から現在まで入退した会員の数は110余名で、その中には文化勲章受賞者や芸術院賞受賞者そして芸術院会員となった会員が10数名居り、順不同で氏名を列挙すれば次の通りです。

田崎広助、伊藤清永、石井鶴三、大久保作次郎、井手宣通、小堀進、高田誠、田村一男、楢原健三、佐竹徳、藤本東一良、中村善策

当協会の現在の会員は24名で美術団体としては小規模でありますが、今後とも、山岳を真に尊崇する画家の集団として、山岳芸術の発展振興に及ばずながら寄与すべく、内外の山々をテーマとした作品の制作に励んで参る所存であります。

第1部 出品作品のご紹介(24名)

青木惇子

神奈川県生まれ、現在埼玉県在住。示現会準会員。

1. 作品名「上高地」油彩画 F50
写生場所は上高地大正池10月なのに、急に大雪が降り、穂高連峰はすっぽりと雪を被り、麓はまだまだ美しい紅葉だった。贅沢な三段紅葉と、真白な穂高に圧倒された、すばらしい自然の贈り物を下さった神様に感謝して絵筆をとった。
2. 作品名「シヤンボリック」油彩画 F20

伊東政朗

東京都生まれ、現在千葉県在住。大調和会委員、千葉県展会員。

1. 作品名「那須岳紅葉」油彩画 F50
10月の中旬、那須岳は紅葉で美しく彩られます。南月山経由で那須岳(茶臼山)に登り、三斗小屋温泉の大黒屋に泊まりました。途中で見たこの時の紅葉の見事な景色が忘れられません。
2. 作品名「山里」油彩画 F10

伊藤康秀

東京都生まれ、現在千葉県在住。習志野市美術会々員。

1. 作品名「雪渓・一の倉沢」油彩画 F50
渓の雪崩も落着き、新緑の季節(六月中旬)に谷川岳の一の倉沢にやってきました。春先の雪崩の轟音も今はなく、小鳥の囀りと渓を渡る風のみの静かな春の一日でした。
真冬の厳しさから開放された岩壁と残雪と新緑のコラボを表現してみたくてここまで登ってきましたが、昨夜来の雨の為、稜線は厚い雲の中でした。
穏やかな中にも厳しさのある山の姿を少しでも表現出来れば幸いです。
2. 作品名「山里に冬近かし」油彩画 P10

江村真一

東京都生まれ、現在東京都在住。創元会運営委員、日本山岳会々員、三峰山岳会々員。

1. 作品名「初夏立山」油彩画 F50
梅雨の晴間を見て、立山に向かう。室堂はさすがに人が多い。みくりが池を過ぎ雷鳥平までくると、人影も少なく静寂になる。連休のにぎわいが信じがたい。アイゼンを付け、急な雪の斜面を登っていく。別山乗越に出ると、目の前に残雪に輝く剱岳の雄姿がとびこんでくる。風もなく絶好の写生日和だ。別山にかけて、剱岳と立山を数枚描くことができた。この作品はその一点である。幸運なことに、翌日も快晴が続いたので、スケッチをしながら立山を縦走して一ノ越から室堂へ出る。
2. 作品名「ペルーアンデス(チンボヤ山)」油彩画 F20

熊谷榧

東京都生まれ、現在神奈川県在住。日本美術会々員、豊島区立熊谷守一美術館館長。

1. 作品名「カッパドキア 地中の町」油彩画 F50
2. 作品名「きのこ岩からエルビアス火山」油彩画 F12

栗又功雄

東京都生まれ、現在東京都在住。示現会々員、稲門山の会々員、日本美術家連盟会員。

1. 作品名「アンナプルナ南峰」油彩画 F50
ヒマラヤ・アンナプルナベースキャンプまでのトレッキング。2012年11月、初めての4000mに挑戦。真夏のポカラから車で2時間ほど、カーラから歩き始める。アップダウンの繰り返しで、5日目アンナプルナベースキャンプ4030mに到着。夕日の沈むころ、アンナプルナ南峰をスケッチ。透明で深い青の空は、油絵では表現できなかった。
2. 作品名「ヒマラヤの秋」油彩画 F8

小谷明

東京都生まれ、現在東京都在住。日本旅行作家協会副会長。

1. 作品名「ヒマラヤの景観」油彩画 M50
エベレスト街道の基地は、ナムチェバザール、シェルパの村だ。村を出発すると正面右手にアマダブラムが見え、進むと左手からローツェシャール、ローツェの大岩壁が見えてくる。その稜線中央にエベレストが頭を見せている。午前中はシルエットだが、午後となると岩壁が輝きだして圧巻だ。今夜の宿営地タンボチェはアマダブラムの山裾にある。
2. 作品名「カンテガ、タムセルク」油彩画 F20

後藤三男

茨城県生まれ、現在千葉県在住。日本美術家連盟会員、日本山岳会々員。

1. 作品名「グランドジョラス南陵(イタリア)」油彩画 M50
イタリアとフランスの国境に当たる4000m峰のモンブラン山群の南面で、アントレーヴとスイス国境に至るフィレの谷一帯に広がるところで、冬はスキー場、夏はリゾート地、その裏側はフランスのシャモニーミディ針峰群ドリューとメール・ド・グラスの氷河地帯、シャモニー側にはライセンスを持ったスキー指導員、夏は山岳ガイドとして働く邦人と複数の山岳ガイド社、邦人ガイドが常駐している。
2. 作品名「マルファーの村(ネパール)」油彩画 F20

小林浩子

長野県生まれ、現在長野県在住。示現会々友。

1. 作品名「槍ヶ岳初冬」油彩画 F30
昨年11月の終わり、燕山荘が小屋閉めの日に燕岳に登りました。11月とは思えないほど多くの登山者が宿泊していました。この時期山はもうすっかり雪山の様相です。
燕岳から見える槍の姿は、手前からずうっと大天井岳へ尾根が続き、その向こうに槍ヶ岳がどっしりと構えています。ここからは小槍、孫槍も見え、また険しい北鎌尾根、東鎌尾根、更には常念岳や穂高の山々も望めます。その山々を雲や太陽の光が時には素早く、時にはゆっくり穏やかに渡っていきます。
2. 作品名「安曇野雪景」油彩画 F8

清水保博

愛知県生まれ、現在愛知県在住。水彩画。

1. 作品名「白馬三山の夜明け」水彩画 P30
ほのかに残雪を赤く染める「白馬三山の夜明け」。山の日の出は爽やかだ。 雪と岩をほの赤く染め、岩陰を茶紫に、雪上を紫に。中腹のベールを、まだ少ない朝の赤い日差しと、それに目覚める前の暗い闇。麓のベールは森の大樹の精。そして手前の這松と岩が登山道の色どり。
2. 作品名「千丈より甲斐駒ヶ岳を望む」水彩画 P10

杉山修

東京都生まれ、現在東京都在住。東京都山岳連盟、好山会々員、吉田版画アカデミー所属。

1. 作品名「ユングフラウ 仰ぐ」木版画 全紙
6月下旬のスイス・アルプスは、高山植物が咲きみだれる最も彩やかな時期です。この絵を描いたときも足元は黄色のタンポポが、ジュータンの様に一面に咲いていました。
しかし私は、この彩かな風景をあえて墨で描こうと決めていました。足元の花をあきらめ、頭上にそびえ立つユングフラウの秀峰の岩と雪の世界に圧倒されたのです。まぶしい陽光、白い雪面、均整のとれた美しい稜線、忘我の時間でした。
2. 作品名「マッターホルン 黎明」木版画 半切

須藤卓男

東京都生まれ、現在東京都在住。創元会々員、日本山岳会々員。

1. 作品名「雲海」油彩画 F30
2. 作品名「八ヶ岳山麓」油彩画 F20

髙橋てる子

東京都生まれ、現在神奈川県在住。日本山岳会々員、カルチャー講師。

1. 作品名「鉢伏山の散歩路」油彩画 F30
諏訪湖の上にある鉢伏山は、車で行く事が出きて、四季を通じて色々の花たちが、私達を楽しませてくれます。夏の終わりは、花々を見ながらゆっくりと歩いて、最高の気持ちにしてくれました。 今は亡き夫と何回も歩いた思い出の山になってしまいました。
2. 作品名「天国へのトレース」油彩画 P20

武井清

東京都生まれ、現在山梨県在住。元光陽会々員、日本山岳会々員。

1. 作品名「春の穂高連峰」油彩画 F100
五月の槍沢を滑らうと、連休明けをねらって、山の友人達と槍ヶ岳山荘へ向った。3000mを超えると山は未だ冬。夕暮れの山頂でスケッチをするが、寒くて思うようにペンが走らない。しばらくなにもせず、ただ目のまえに広がる穂高連邦をみる。 神々しい荘厳なたたずまいをみせる山々を心にしっかりやきつける。明日も天気は良さそうだ。
2. 作品名「春の剱岳」油彩画 F50
3. 作品名「ユングフラウ(スイス・クライネシャイデック)」油彩画 F20

武本嘉成

東京都生まれ、現在千葉県在住。無所属。

1. 作品名「筑波山 秋」油彩画 F50
広い関東平野にそびえ立つ「筑波山」は、昔から「西の富士、東の筑波」と愛称され、茨城県の南西部に位置し、男体山、女体山の2つの峰を持ち、古くから信仰の山として栄えている。山頂に筑波神社の本殿があり、山腹に拝殿がある。日本百名山の中で、最も標高が低い(877m)独立峰で、水郷筑波国定公園に指定されている。自宅から比較的短時間で行ける百名山なので最も多く描いている山である。この山は四季の変化の色が少なく、色で描く小生としては苦労する山である。見る位置により型が変わるが、この絵は国道294号線の下妻市から描いたものである。
2. 作品名「浅間山 春」油彩画 F20

田中泰道

東京都生まれ、現在神奈川県在住。大調和会々員、港の作家美術協会々員、日本山岳会々員。

1. 作品名「マナスル曙光」油彩画 F50
マナスル(8163m)は、日本人が初登頂の8000m峰でヒマラヤ山脈のネパールにある。
10月下旬にカトマンズからヘリでマナスル山群の山麓のロー(3150m)に着いた時は雨期の最終日で、翌日から晴天が続き素晴らしい山々を眺めながらのトレッキングとスケッチを楽しむことができた。この絵はサマドゥ(3900m)でのキャンプから夜明け前サマドゥピークへの急斜面に取り付き、今まで前山で見えなかったマナスルが見え出し、夜が白々と明け始めたところでスケッチを始め、マナスルが日の出直前赤く染まるのを待って水彩で(淡彩)で彩色したものを作品にしたものです。日の出直前の短時間、赤に染まる山、私の好きな場面です。
2. 作品名「ランタン谷、新春の祈り」油彩画 F15

谷口満子

京都府生まれ、現在東京都在住。示現会々員。

1. 作品名「岩壁 ガバルニー圏谷」油彩画 F50
ピレネー山脈のほぼ中央にあるガバルニー圏谷は、世界遺産に登録されており、1000m以上の岩壁に囲まれ、数々の大滝が流れる景観には圧倒されます。
この絵の地点は、フランス側から谷を滝のしぶきのかかるところまで登るトレッキングの途中です。徐々に迫ってくる岩の壁のすごさと全容がとらえられたらと思って描きました。ガバルニーの村からも全体は見えるのですが、間近で見るとすごい迫力です。6月末。
2. 作品名「ブータン松の谷」油彩画 F15

千葉潔

大阪府生まれ、現在長野県在住。無所属。大坂芸大卒。

1. 作品名「南岳より穂高連峰」油彩画 F50
槍ヶ岳スケッチ教室の講師として毎年訪れる際に、欠かさず南岳にも足を伸ばす。南岳の山頂や獅鼻、そして常念平方面から穂高連峰に目を向けて数え切れぬ程、取材を重ねて来た。昨年の取材は天候に恵まれ、午後からの光でデッサンを取る事ができ、今回の作品となった。言うまでもなく、日本の山は午前中天気が安定し、午後崩れる事が多い。一日を通してコンディション良く取材を続ける事は難しく、また珍しい。貴重な一点となった。
2. 作品名「槍沢、光り溢れ」油彩画 F20

中村勝久

広島県生まれ、現在長野県在住。日本美術会々員、新作家美術協会々員、日本山岳会々員。

1. 作品名「餓鬼岳と桜」油彩画 P50
昨年から取り組んでいる作品ですが、桜の季節は早く変るので、仕事がついていきません。遠景、中景、近景の季節が少しずつ、ズレていたりしますが、とりあえずそのままにしています。
機会があれば何時の日かに統一感のある作品に仕上げたいと考えています。
2. 作品名「上高地」油彩画 P15

藤田錦一

東京都生まれ、現在千葉県在住。無所属。

1. 作品名「白馬岳への縦走路」油彩画 F50
白馬鑓ヶ岳方面から見た縦走路を描いた。手前の荒々しい岩肌を見せるのが杓子岳、奥の美しい三角錐が白馬岳。夏山特有の沸き立つ雲に隠れる直前を描いた。
白馬岳は見る角度によって様々な表情を見せるが、白馬山荘が見えるこの縦走路の眺めは、白馬岳への憧れを大きくする。この方角から見ると、白馬岳は穏やかな斜面、杓子岳は厳しい岩肌。その対比が魅力だ。
美しく、たおやかで荒々しい。そんな多様な表情を見せる山域に魅了されてやまない。
2. 作品名「夏の白馬岳」油彩画 F20

細野清嗣

東京都生まれ、現在千葉県在住。無所属。水彩画。

1. 作品名「チョモランマ(エベレスト)」水彩画 F40
世界最高峰8848mのエベレストは、ネパール名サガルマータ、中国名チョモランマと三つの名前がある。初登頂は、1953年英国探検隊のニュージーランド出身の登山家エドモンド・ヒラリーとチベット出身のシェルバ テンジン・ノルゲイによってなされた。日本人初登頂は、1970年の松浦輝夫・植村直己。女性初登頂は、1975年の田部井淳子。最高齢登頂者は、80歳の三浦雄一郎。
2. 作品名「K2」水彩画 F10

増田欣子

東京都生まれ、現在千葉県在住。朱葉会理事、現代童画会常任理事、日本山岳会々員。

1. 作品名「聖山カイラス(チベット)」油彩画 F50
チベット高原の西に位置し、仏教、ヒンズー教、ボン教の聖地。人々は五体投地で、山の周囲52㎞を巡礼する。
独特の山容は、高原の単独峰と言う事もあって、はるかな地から巡礼に訪れる。
2. 作品名「ラカボシとフンザの春」油彩画 M30

若林晴男

神奈川県生まれ、現在長野県在住。元白日会々員、大町美術会々員。

1. 作品名「山麓浅春(八ヶ岳)」油彩画 F50
この風景を描いた場所は、山梨県北杜市の甲陵高校沿いの道路際で、今春未だ寒気が厳しく、時折雪がちらつく中でのスケッチから始めた。従って、八ヶ岳を南側から望む景色である。中央が権現岳、その左に編笠山と三ッ頭、右に尖った形で聳えているのが主峰赤岳である。中景の林の広がりの下に田畑と家並みの見える佇まいを山と共に描いたものである。その後二度に亘る大雪があって、現場写生を暫く中断し、雪解けを待って、描き込みに行ったのは、3月下旬から4月上旬で、林の樹々には芽生えの色がみえはじめて、題名通りの浅春を迎えていた。
2. 作品名「春雪富士」油彩画 F20

渡邊良一

福島県生まれ、現在千葉県在住。示現会委員。

1. 作品名「フンザ村」油彩画 F25
フンザ村はパキスタン北部に位置し、イスラマバードよりバスで14時間。
カラコラム・ハイウェイで、インダス川インダス川にそって北上、雄大な山々と息を呑むような美しいパノラマに囲まれた自然の中を走っている。
フンザ村は、7000m級の山々に囲まれたのんびりとした静かな村で、急斜面に石を積み上げた畑、ポプラの木と杏の花そして白い山が印象的な村でした。
2. 作品名「白馬」油彩画 F20

特別展 第2部「北アルプスを中心とした山岳画」はこちら

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